健康向上に対して金銭的報酬を与えるプログラムの研究において、意外な結果が得られたという。患者と医師の双方に報酬を与えた場合、1年間の治療でLDL(「悪玉」)コレステロール値が有意に低減したのに対し、患者または医師のいずれか一方にのみ報酬を与えた場合は、コレステロール値の有意な低下がみられないことがわかった。 研究の筆頭著者である米ペンシルベニア大学(フィラデルフィア)教授のDavid Asch氏は、「今回の結果は医師と患者が意思決定を共有することの価値を裏付ける新たなエビデンスだ」と述べるとともに、医師への単純な「能力給」に疑問を呈するものでもあると指摘している。この知見は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に11月10日掲載された。
今回の研究は、米国北東部のプライマリケア医340人、患者1,500人強の協力を得て実施された。コレステロール降下薬(スタチン)を指示通り飲んだかを追跡できる電子薬瓶を使用して、医師・患者のチームを以下の4群に分けた。
・患者のコレステロール値が目標に達した場合に、医師だけに最大1,024ドル(約12万円)を支払う群。
・指示通り服薬した患者だけに同額を支払う群。
・責任を全うした医師と患者で報酬を共有する群。
・医師にも患者にも報酬はなく、参加料355ドル(約4万4,000円)のみ支払う対照群。
その結果、対照群に比較して統計学的に有意なLDLコレステロール値の低減がみられたのは、医師と患者が報酬を共有した群のみだった。「ただし、その差はわずか8.5 mg/dLであり、心血管イベントを4%低減させる程度にとどまった。また、金銭的インセンティブを設定したにもかかわらず、遵守率は共有報酬群で39%、患者報酬群で34%にすぎなかった」と米国心臓病学会(ACC)のPam Morris氏は指摘し、このモデルの対費用効果に疑問を呈している。
Asch氏は、報酬の効果が期待したほどではなかったことを認める一方で、今回の研究で対象としたのは最も治療の困難な症例であったと説明。また、対照群でも他の群と同様に電子薬瓶を使用したことが、ある程度リマインダーの役割を果たした可能性もあるとしている。
研究チームは現在、この報酬システムの費用効果分析に乗り出しているという。費用に見合う健康改善が裏付けられれば、将来的な医療コストの削減のために雇用主や保険会社が報酬を出すことも考えられるとAsch氏は述べている。(HealthDay News 2015年11月8日)
http://consumer.healthday.com/general-health-information-16/doctor-news-206/cash-for-lower-cholesterol-program-works-with-doc-patient-teams-705048.html
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2015.11.25 12:21
コレステロール低下で「患者と医師が報酬をもらえる」プログラムが有効
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