古くからある単純な医療機器「電気喉頭」の新用途を、オランダの医師らが報告している。呼吸補助のための気管内挿管により話すことのできなくなった入院患者にこの機器が役立つ可能性があるという。
電気喉頭は1920年代に初めて開発されたもの。電気かみそりほどのサイズの円柱形の機器で、一方の端が振動する。主にがんなどで声帯切除を受け、話す能力を失った患者に使用されてきた。今回の報告を行ったオランダ、VU大学メディカルセンター(アムステルダム)のArmand Girbes氏は、「過去のものであり、学生時代にこの機器を用いて話すことができるようになった患者を見て、強く印象に残った」と述べている。
Girbes氏は、肺手術後に人工呼吸器を装着した患者が話せないことに苛立っていると患者の妻から聞き、この機器のことが思い浮かんだ。病院内を探して唯一残っていた電気喉頭を見つけ出し、「まず試しに機器を自分の頸部に当ててみた」という。最初は、口パク(リップシンク)しているような感覚を覚えたが、数分間練習すると、自分で実際に声を出そうとしなくても口と舌を使って単語を構成し、理解可能な言葉を発することができるようになった。
59歳の患者はこの機器の使い方をすぐに覚えた。「患者が初めて妻に言った言葉を今も覚えている。『Hello, my dear(やあ、君)』。集中治療を受ける重篤な患者の声を聞くのは実に感動的だった」と、Girbes氏は述べている。同氏の報告は「New England Journal of Medicine」3月20日号に掲載された。
米南カリフォルニア大学(ロサンゼルス)助教授のLindsay Reder氏は、この知見について「面白いアイデアだと思うが、挿管された患者の多くは鎮静剤を使用している」と指摘している。Girbes氏はこれに対し、人工呼吸器装着患者に電気喉頭を用いる副効果として、ストレスが軽減されるので鎮静剤の使用を減らすことができる可能性があると述べている。せん妄や過鎮静は集中治療室の患者にみられることが問題となっている。Reder氏はこの見解について、興味深い仮説だが、裏付けにはさらに研究を重ねる必要があると指摘している。(HealthDay News 3月19日)
http://consumer.healthday.com/caregiving-information-6/hospital-news-393/an-old-device-may-restore-speech-to-ventilated-patients-685959.html
Copyright (c) 2014 HealthDay. All rights reserved.