米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク)のCharles Luther氏(今回の研究には関与していない)は、「自殺リスク予測のための血液検査がすぐに実用化できるわけではない」と述べる一方、客観的な検査は必要であると付け加えている。精神科医は、患者の経歴や現時点での生活状況を調べるほか、患者の心の状態を尋ねることしかできない。問題は、患者が真実を認めない場合があることだと、研究著者である米インディアナ大学医学部准教授のAlexander Niculescu氏は述べている。
今回の研究では、大規模な長期研究プロジェクトの参加者から双極性障害の男性9人に着目。研究期間中、9人はいずれも自殺傾向のない状態から、自殺念慮または自殺企図のみられる状態へと進行した。血液を調べると、自殺傾向の出てきた男性の血液に41種類の蛋白の変化がみられることが判明した。次に、自殺した同年代の男性9人の血液検体を検視官室から入手し、最終的に自殺リスクとの強い関連を示す6種類の蛋白を特定した。最も大きな変化がみられたのは「プログラム細胞死」に関与するSAT1と呼ばれる蛋白で、ほかには炎症や身体のストレス反応に関与する蛋白もみられたという。
ただし、この知見が、これらの蛋白レベルの上昇が自殺の「原因」となることを意味するわけではないと、Luther氏は指摘。Niculescu氏は、今回の被験者はいずれも白人男性(死後の血液検体1点は黒人男性)であったことから、女性や他の民族を対象に検討する必要があるほか、大うつ病などの他の精神疾患患者にも焦点を当てる必要があると述べている。
米国自殺防止リソースセンター(ワシントンD.C.)のMorton Silverman氏は今回の研究について、「自殺傾向」の定義に幅がありすぎるという問題を指摘する一方、この研究の「精巧さと創造性」を称賛している。Niculescu氏は、仮に血液検査が実現したとしても、それだけを頼りに治療計画を立てることはできないと述べている。Luther氏もこれに同意し、「われわれが扱っているのは複雑な感情と経験をもつ人間であり、単なる検査結果以上のことを知る必要がある」と指摘している。(HealthDay News 8月20日)
http://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/bipolar-affective-disorder-news-60/a-blood-test-for-suicide-risk-679368.html
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