注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療薬は自殺企図または自殺のリスクを上昇させず、むしろ保護的な効果をもたらす可能性もあることが新たな研究で示唆された。
今回の新しい研究を行ったスウェーデン、カロリンスカ研究所(ストックホルム)のHenrik Larsson氏らによると、これまでの研究でADHD薬により自殺行動のリスクが増大する可能性が示唆されていたが、小規模研究であったり用いられた手法に問題があったりしたため、その知見は疑わしいものであるという。
この研究では、1960年~1996年に出生し、ADHDと診断された約3万8000人の患者全例を対象として、2006年~2009年の間で患者がADHD薬を服用していた時点と、服用していなかった時点での自殺行動の比率を追跡した。その結果、ADHD薬の服用により自殺企図または自殺のリスクが増大するとのエビデンスは認められなかった。この知見は、「BMJ」オンライン版に6月18日掲載された。
Larsson氏は、「今回の研究では、ADHD薬が自殺企図または自殺のリスク増大に関連しない可能性が高いことを、数通りの方法で示している。ADHD薬による保護的な効果の可能性も示された」と述べている。この研究の強みは、患者がADHD薬を服用していた時期と服用していなかった時期の比較を行ったことだという。「特定の薬剤のリスクに関する集団ベースの研究の多くは、薬剤を服用する人と服用しない人の差について調整していない。薬剤を服用する人は通常、非服用者よりも重病であることを考えれば、このことは重大な欠点である」と、Larsson氏は付け加えている。
ADHD治療の専門家である米シルバー・ヒル病院(コネチカット州)のAaron Krasner氏はこの研究について、標本数が大きく、また各個人が薬剤を服用しているときとしていないときの自殺行動を追跡したことから、優れたデザインであると述べている。Krasner氏はさらに、今回の研究結果は普通の医師にとっては直感的に理解できるものであるとし、「十分な監視と評価を徹底すれば治療は有効であり、不必要に患者から奪うべきものではないことがわかっている」と指摘している。(HealthDay News 6月20日)
http://consumer.healthday.com/kids-health-information-23/attention-deficit-disorder-adhd-news-50/no-sign-that-adhd-meds-raise-suicide-risk-study-689009.html
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