体毛が全く生えなくなる稀な疾患である全身脱毛症の患者に、関節炎の治療薬であるトファシチニブクエン酸塩(商品名:ゼルヤンツ)を投与することで、頭皮全体に髪が生えたことが新たな研究で報告された。患者は25歳の男性で、同薬による治療で頭髪だけでなく、眉毛、睫毛のほか、顔面、腋窩、その他の体毛も生えるようになったという。全身脱毛症には完治や長期治療の方法がなく、治療の成功例が報告されたのは今回が初めてだという。
研究著者である米エール大学医学部助教授のBrett King氏は、「今回の結果はまさにわれわれが望んでいたものだ。今回の知見は、この疾患の治療に近づく大きな一歩だ。1症例ではあるものの、疾患と薬剤に関する最新の理解に基づき、この男性の治療は成功すると予想していた。他の患者でも同じ結果を再現できると考えており、その試みを実施する予定だ」と述べている。
「Journal of Investigative Dermatology」オンライン版に6月18日掲載された今回の研究によると、この患者が1日10 mgのトファシチニブクエン酸塩の服用を開始して2カ月後、頭髪と髭が生え始めた。この部位に毛が生えるのは7年ぶりであったという。その後、同薬を1日15 mgにし、3カ月間服用すると、頭皮全体に髪が生え、明確に視認できる眉毛および睫毛のほか、顔面、腋窩およびその他の体毛も生えるようになった。8カ月後には体毛が完全に再生した。患者に自覚できる副作用はなく、臨床検査でも問題は認められなかった。
King氏は、トファシチニブクエン酸塩が全身脱毛症患者にみられる免疫系による毛嚢への攻撃を止めることによって、体毛の再生を促すと考えられると説明する。次は、この疾患の治療にトファシチニブクエン酸塩のクリーム剤を使用する臨床試験を実施したいという。(HealthDay News 6月20日)
http://consumer.healthday.com/senior-citizen-information-31/misc-arthritis-news-41/man-goes-from-hairless-to-hairy-thanks-to-arthritis-drug-689072.html
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