イヌを訓練することにより、ヒトの尿から前立腺がんの徴候をほぼ完璧に嗅ぎ分けられるようになることを、イタリア、Humanitas研究病院(ミラノ)のGianluigi Taverna氏らが米フロリダ州オーランドで開催された米国泌尿器科学会(AUA)年次集会で報告した。
それによると、特殊な訓練を受けた2頭のイヌにより、前立腺がんによって尿中に放出される有機化合物を98%の精度で検出することができたという。「PSA検査、生検、画像スキャンなどの診断ツールと併用すれば、イヌの利用が将来的に現実のものとなる可能性が示された」と、Taverna氏は述べている。
今回の研究では、さまざまな程度の前立腺がん患者320人、健常者357人の計677人から採取した尿検体を用いてイヌを訓練し、試験した。前立腺腫瘍により産生される揮発性有機化合物は、容易に空気中に蒸発し、イヌの嗅覚で検知可能なにおいを生じる。研究チームは、イヌががん患者の尿のにおいを捕らえてその前に座ることができれば褒美を与えた。イヌは記憶力がよく、個人の臭いを覚えている可能性があるため、別の尿検体を用いて試験した結果、1頭は98.9%、もう一頭は97.3%の精度で前立腺がんの存在を検知することができた。
この結果は、前立腺がんの診断にイヌが有用である可能性を示すものだと、Taverna氏は述べ、「この方法は再現性があり、低コストで非侵襲的。イヌを使うことで、不必要な生検を減らし、リスクの高い患者を正確に突き止めることができる」としている。これまでの研究でも、疾患を検知するイヌの能力が示されている。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校准教授 のCharles Ryan氏によると、最近の研究では、イヌが呼気のにおいから肺がん患者を正確に特定できることが示された。
しかしRyan氏は、がんの検知に常にイヌを用いることについては懐疑的な姿勢を示している。特に前立腺がんに関しては現在、過剰検出や過剰治療について激しく議論されている。ほとんどの男性が高齢になると、前立腺がんを発症するが、最後は他の病気で死亡する。前立腺腫瘍の治療により勃起障害や失禁などの問題に悩む患者が多いため、発見されないほうがよいと主張する医師もいる。とはいえ、今回のような知見には科学者として魅力を感じると、同氏は述べている。
なお、この知見は学会発表されたものであるため、ピアレビューを受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなす必要がある。(HealthDay News 5月18日)
http://consumer.healthday.com/cancer-information-5/prostate-cancer-news-106/dogs-able-to-sniff-out-human-prostate-cancers-687919.html
Copyright (c) 2014 HealthDay. All rights reserved.